BACK 朝のケネディーパークNEXT ダブリンのタクシー   

バッグにお金を入れながら、銀行の廊下の奥の方を見た。そこから買い物客の婦人が出てきた。「なぜ、買い物客が・・・」と、不思議に思いながら奥に進んだ。そこには広いフロア−と通路が有り、その正面には明るいレストランとス−パマ−ケットの入り口が見えている。さらに、セ−タ−、洋服、バッグ、靴店などの専門店が一直線に並んでいる。全店が結構にぎわっている。大きいショッピングセンタ−で、1階の真上に専門店の並んだ2階が見えている。建物は新しく、ダブリンのセント・ステイ−ブンス・ショッピングセンタ−に雰囲気が似ている。ビルは2階建てでダブリンのものより一回り小さい。レストランは、奥の壁から手前の広いフロア−に向かって扇形をしている。中央に、一段高い回転舞台ような木製の円形フロア−が造られている。その上にテ−ブルが10卓ほどある。4人用テ−ブルの真ん中に、大きなビ−チパラソルが「日よけ用」のために建てられている。ドアーや入り口はない。戸外のオープンレストランのように明るい。注文は、「舞台」に上がり奥の売り場に行けばよい。上部に「帆船」と赤い字が鮮明に描かれた白い帆が吊るされている。

 奥からカレ−のスパイスのいい香りがしてくる。しかし、その誘惑に負けず、空腹を我慢して東側の突き当たりまでウィンドショッピングすることにした。若い女性旅行者が多く男性の少ない。品物はよく売れている。チョコレ−トの専門店は若い女性客で賑わっている。通路の両側に大小15店舗ほどの専門店がある。ここは、スーパーマーケットを含めた大きなショッピングセンタ−だ。アイルランド陶器や「民芸品」のお店もあり、ウインドウショッピングだけでも楽しい。東の突き当たりは「オ−プン」で、街の道路に繋がっている。そこが、正面出入口にもなっていてお客で混雑している。外に出てみると、道の両側に古い石畳の道とブリック建築のお店が並でいる。「中世の街」にタイムスリップしたようだ。空腹が、「街を見たい」という気持ちに勝った。帆船に戻り食事することにした。戻り路の女性専門店の大きなショ−ウインド−の中に、手編みのセ−タ−が陳列されている。「アラン」セーターだろうか、濃紺とワインレッドの色を合わせて編んでいる。木製のボ−ドにスカーフと供に飾られていて、栗色の髪をした白い肌のお嬢さんに似合う。レストランに着いた。「舞台」に上がり長い陳列台の前に立った。向こう側に、制服を着た若い女性店員が3人いる。彼女達は、シャロン達のような学生のアルバイトに見える。その奥の小さい厨房から、出来たての食べ物が運ばれて来ている。

 2人の女性店員が、手際よくテ−ブルの上の後片づけをしている。天井からの明るい太陽で、彼女たちは一段と明るい。テ−ブルの間隔は広くゆったりしている。大きな鉢植えの涵養植物が、うまくテ−ブル間の仕切りをしている。「舞台」は木製の床で足の裏に心地よい。フロアーは木造が最高だ。天井(ガラスの天窓)から、自然の光がさんさんとレストランのフロア−に降り注いでいる。奥の北壁は、中世の城壁のような石組みになっている。テーブル間の涵養植物はゴムなどの南国植物である。青々としていて、南国の野外レストランで食事をしているようだ。「直射日光」を避けているのか、二人ずれのお嬢さんがパラソルのあるテ−ブルでお茶タイムしている。陳列の一番左側は、「冷蔵用」で冷たい飲み物とサラダが入っている。中央の大きい陳列は3段に区切られ、カレ−、ハンバ−グなどの出来立ての料理が並んでいる。右端にはケ−キ、フル−ツ類がある。客の要望に応じて、食べ物はレンジで暖めて出される。最後のコ−ナ−にスープやコ−ヒ−がある。目の前の彼女に、「カレ−ライスとホットコ−ヒ−お願いします」と注文した。彼女は僕に、「ホットコ−ヒ−ですね」と聞き返した。少々聞き取れなかったが、「はい」と返事をしておいた。彼女は、コ−ヒ−豆をセットし、円筒形のガラス制容器に熱湯を注いだ。そして、暖まったカレ−ライスと、そのガラス制容器、コップをトレ−に乗せた。そして、「レジで精算して下さい」と言った。ボ−ドに、ドリンクのメニュ−と料金が書かれている。コ−ヒ−は1カップ70ペニ−、1マグカップ85ペニ−、1ポット90ペニ−となっている。それらのメニューを見て、彼女が僕に確認した理由が理解できた。「カップかポット」の確認をする為に、「ポットコヒーですね」と、聞き返したのだろう。

 ホットコ−ヒ−がポットコヒ−になってしまった。レジを済ませ、横のセルフサ−ビスのカウンタ−に移動した。そこで、フレッシュと砂糖などをトレ−の上に置いた。「舞台の中央」付近のテ−ブルが空いていた。昼の太陽が、ガラスの天井からダイレクトにテ−ブルの上を照らしている。白いご飯がよけ白く、カレ−が一段と暑く見える。色も味も日本と変わらない。米は癖のある臭い匂いもなく甘みがある。どこの産だろうおいしい。「ポットコヒ−」は、沸騰したお湯がポットの下の方に入っている。上部にはコヒ−豆が入れてある。小さい穴がある薄いステンレス製の円盤が乗っている。その中心にステンレス製の長い棒がポットの口の上まで出ている。棒の上部にプラスチック製のつまみが付いている、複雑な構造である。「コ−ヒ−の作り方が分からないんです」とウエイトレスに言うと、彼女は目をクリッとしてニコッと笑った。彼女は上のつまみをゆっくり押し下げていった。コヒ−豆の入った容器が底に着くと、琥珀色のコヒ−が出来上がった。彼女は自慢そうに「どうぞ」と言ってコップに注いでくれた。テ−ブルは女性客でいっぱいだ。太陽が直接あたり高温なのか半袖姿のが多い。一人で本を読んでいる若い女性、旅行者らしき中年のカップルもいる。皆、昼の一時を楽しんでいて実にゆったりしている。この光景が「ゆったり」としていると思うのは、いつも、「せかせか」と社員食堂で食事しているからであろうか。「経済大国日本」と「経済小国」アイルランドを比べると、アイルランドの方が豊かに思える。